田舎でゲストハウス(商売)をやる上で考えるべきこと②

前回に続いてこのシリーズ。

実はこのテーマのブログを書くことは僕なりの理由があったのですが、それを初回で達成してしまいましたので、下書きでは結構前に書いていましたが、更新を怠っていました。すみません。

ブログを書くのは時間もかかるし、人に自分の考えなどを公開することは勇気のいることでもありますが、改めてその重要性を再確認しました。なのでせっかくの機会なので、このテーマは続けて書きたいと思います。

前回は田舎でゲストハウス(商売)をやる上では、まずビジネス目線は置いて、自分がその土地を好きであること、住みたくて仕方がないと思うほど魅力を感じているかが重要になると言いました。

さて、それでは2回目の話に移りたいと思います。

田舎でゲストハウス(商売)をやる上で考えるべきこと

 「コンセプトとターゲット(ペルソナ)をしっかり定めること」

これも田舎に限った話ではないんですけどね(汗)
箱を作って、開けておけばお客さんが来る立地ではないということから、田舎に置いてはさらに重要ということで話をします。

まずは、宿(商売)のコンセプトですよね。
コンセプトは宿(商売)の魂となる部分。自分軸ですよね。一本真っ直ぐとした軸があると、サービスや運営がそれに基づいたものになります。それがないとサービスがブレブレで、提供側も何がしたいのかよくわからないし、提供されている側もただの消費行為で終わります。人間も同じなんですが、ビジネスにおいても命を吹き込んで、何を実現していきたいのかを明確にすることで、とても魅力がでてきます。コンセプトがあるかないかは泊まればはっきりわかります。

自分もいくつかゲストハウスを泊まりましたが、また来たいと思うゲストハウスほどコンセプトはしっかりしています。逆にほとんど印象に残らないゲストハウスはコンセプトが全然見えません。ただの泊まるところになるわけで、それなら普通のホテルでいいじゃんってなるわけです。私は別にゲストハウスという宿泊形態にはそんなに拘りはないんです。だから、本当は「雷鳥」で良いと思っています。ある意味カテゴリー分けされないということは、「宿」という観点で特徴ある宿になれている証拠ではないかと思います。

ゲストハウスのオーナーさんがたまに泊まりにくるのですが、だいたい皆さん言うのが、

「ここはゲストハウスではないですよね」

そして私は「はい」と言って、よっしゃっと心で思うのです。宿にカテゴリーなんて本来必要ないと思っています。民宿、旅館、ホテルも同じ。本来カテゴリーは要らないけど、特徴が良くわからないからまずはカテゴリーで選別されてしまう。

「ゲストハウス」と付けたのは、最初の戦略です。乗鞍・上高地エリアで唯一感を出すつもりでした。また元々事業承継前に旅館だったのと、温泉付きとなると旅館をイメージされていますので、「ゲストハウス」を付けてあえて、周りやこれまでのイメージと差別化をしました。雷鳥としてのブランディングがそろそろ確立されてきたので、そのうち取りたいなと思っています。

雷鳥のコンセプトは「自然にかえる宿」です。
自然とは地球上の豊かな自然と、自分自身の自然体という意味です。
なので、我々のサービスは、「ゲストが自然にかえる旅の支援をする」ということが全ての基本になっています。乗鞍と雷鳥を訪れてくれたゲストが、自然のパワーで本来の自分に戻り、自分らしく、活き活きとした人生を送れるようなサービスをしたいと思っています。交流はあくまで自然体、しかし、自然にかえるためのコミュニケーションにはとても力を入れます。自然にかえるためには、できれば3日以上の滞在を推奨したいので、長期滞在ができるような設備を整え、最低限のサービスでゲストが自分のペースでゆったりと寛げるように心がけています。

そして、そのために何よりスタッフが自然体であることがとても重要だと考えています。

我々も無理をしない。そして自分の好きなことにチャレンジしている。我々が自然体で生活していないければ、ゲストに自然にかえる旅を支援するなんてできるわけがないと思っています。スタッフがノイズゼロの空間の心地よさを知っていて、自然体にかえる喜びだったり、それがどういう物が理解している。それをゲストに共有できることが大切だと思い、そういう運営ができるのが僕が経営者として行っていることです。まだまだ課題はありますが、理想に近づけることを続けていきたいと思っています。

とまあ、これを語りだしたら止まりません(笑)
これが軸であるコンセプトです。

経営方針・運営方針・サービス全てがこのコンセプトを軸として決まっていきます。

次に重要なのが、どういうお客さんをターゲットにするかです。
それに応じて、運営スタイルなども大きく変わってきます。

ここで雷鳥の話をしてみます。前回の3C分析も若干ですが織り交ぜながら話します。スタートする時は、完全に外国人観光客にターゲットを合わせていました。結果、初年度は7割〜8割海外でした。ちなみに今は5割です。

理由
1.日本人観光客は上高地も乗鞍も右肩下がりだった
   Cutomer
→ここを上向きに上げていくには自分だけの力ではなかなか難しい。

2.その上高地・乗鞍に来ている日本人観光客も多くが50代以降であった
   Cutomer
→ゲストハウスという形態に馴染みがないので今来ている層で戦っても勝算なし。

3.インバウンドの成長が期待できた
   Customer
→この波に乗らずして、何に乗る!!(笑)

4.上高地周辺の静かな自然の中に、外国人向けのバックパッカーやリーズナブル
な宿泊先を求めている層が泊まれる宿がなかった
(松本や高山にはすでにいくつもありましたが、自然の中にはなかった)
   Competitor
→アルプスの中のゲストハウスということではブルーオーシャン

5.自分が外国人のニーズを理解していたのでリノベをすれば外国人に喜ばれる施
設を作れる自信があった
   Company
→日本人のような過剰なサービスは必要ない。ただし設備の充実は必要。

6.温泉が旅行者の年代別でもほぼ日本を旅するニーズで上位3位には選ばれてい
て、日本には安価に宿泊できる温泉施設が皆無だった
   Customer, Company,Competior
→温泉付きゲストハウスとしてはブルーオーシャン

さらに外国人観光客の中でも、カップルと家族をターゲットにしていました。
もともと旅館だったので、個室中心の運営ができ、個室でプライベートを求める層を中心に集客しようとしていました。大自然に来るゲストはできる限りゆったりしたいので個室を求めるはず。雷鳥は9部屋のうち7部屋は個室です。本当はドミトリーも無くていいかなと思いましたが、開業当初は裾野を広げていたいと思い、ゲストハウスと謳うならドミトリーはあった方が良いかなと思ったので、ドミトリーを作りました。

ゆっくりしたいという中にはファミリーもいるわけです。ファミリーについては海外だけでなく日本のファミリーも視野に入れていました。今でこそ、ゲストハウス・ホステルは個室のニーズが高まってドミトリーを無くして個室にする動きがありますが、2016年当時はまだまだドミトリー中心で、家族5人で一部屋に泊まれるゲストハウス・ホステルはほとんどありませんでした。日本のファミリーも、今の若いファミリーであれば、ゲストハウス宿泊体験も増え、選択肢に1泊2食付きではない、それよりもリーズナブルで自分たちのペースでゆったり滞在できる場所を探している人もいるはず。

これらがドンピシャでした。
開業1年目は、ここはどこの国だ?というほど、雷鳥は海外旅行者が宿泊して、乗鞍の中で完全に浮いてましたね(笑)

開業当初は予約サイトにほぼ頼り、旅行者は上高地・松本からの検索で雷鳥を探し当てて選んでくれていました。また温泉があることが選ばられる一つの理由であり、レビュー評価が高かった理由の一つにもなっています。また海外からのファミリーも多く滞在しました。そして日本のファミリーも滞在してくれました。年々その傾向が強くなっていおり、日本人の比率が上がっているのは、それが理由で、だいたい一度来たファミリーの皆さんはリピートしてくれています。来年のGWも必ず来ますとか、冬は必ず来ますという家族がどんどん増えています。また海外のゲストがいることも新鮮で、日本人のファミリーは雷鳥で微妙に異国感を味わうこともできます。子供達がハローなんて言って別のゲストに挨拶したり。ファミリー同士で交流したり。それもまた良い空間を作り出しています。なお、現在は50%は直予約になっています。

ビジネスなので利益率を上げることや競合環境も変わる中で成長していくためには、徐々にターゲットを変えていく必要もあり、我々は営業方法やターゲットの優先順位なども変え、設備投資を繰り返しています。それはまた別の機会に話します。この部分は戦略というところです。過去ブログについても戦略について記載しています。

田舎でゲストハウスをやる上でのターゲット設定でまずわかりやすいのが以下の2点です。

1.インバウンド
2.日本人リピーター

1.の場合は、田舎といえど、外国人観光客を呼べるポテンシャルがあるかどうか、すでにマーケットとしてあるかどうかが重要です。
それぞれがあれば、あとは資源を有効活用して、どうのように呼び込むかを考えていきます。

2.の場合及び田舎で観光資源が少ない場合は、ゲストハウスを泊まり歩いたことがある方ならわかると思いますが、さらに二つのゲストハウスがあると思います。

・お家型ゲストハウス(男性オーナー)
お家の延長上にあるアットホーム感が半端ないゲストハウス。
オーナーに個性があり、だいたい毎晩居間のようなところで鍋や日本酒やビールを囲んでみんなで飲む。ゲストにはもう一つの自分の居場所ができたような感覚となります。

・お家型ゲストハウス(女性オーナー及び夫婦経営)
自然な振る舞いでホスピタリティーがあって、男性バイク乗りなどのリピ
ート率や女性1人旅などのリピート率が高い。オーナーの安心感にほっと癒されるような感覚となりリピートへ。もう一つの実家的な感覚。

1.2のどちらを優先順位1にもっていくかで、宿の運営方針はガラッと変わることがわかるでしょうか?

ちなみに、余談ですが、おしゃれに越したことはないのかもしれませんが、田舎でゲストハウスをやる上では、おしゃれじゃなくても大丈夫です。雰囲気は必要です。汚いのは別ですが。オシャレなゲストハウスは都会に沢山あるから、別にそこにそんなに特徴を求めなくても良いわけです。

さらに、ここからはもっと具体的なペルソナを定めると良いでしょう。
休日などに交流を求めている30代〜40代独身男性、となれば、HPや予約サイトの写真、SNSなどが、いつもみんなで賑やかにパーティーをしているような写真になるでしょうね。逆にうちのように、思い思いの時間でゆっくりと滞在してほしい人に来てもらいたいゲストハウスは、交流している写真はほぼなくて、自然だったり、それぞれのゲストがどんな滞在をしたのか、という情報発信になります。インバウンドがメインなら英語での情報発信も必要。さらに欧米系なのか、アジア系なのかでも全然変わると思います。女性の一人旅となれば、女性に配慮された設備だったり、空間作りが重要ですし、家族をターゲットにするなら、小さい子でも楽しく快適に滞在できるかという観点も重要になります。

ターゲットは季節によっても変わると思います。
雷鳥では、冬のメインターゲットはアジア系の旅行者になります。さらに言えばその中でもカップルと家族です。
ターゲットはまず優先順位を定めて、それぞれのペルソナを定めてその人を獲得するためには、どういうサービスや営業をしていけば良いかを一つ一つ定めていくと、成果が出やすいと言います。僕も今それを実践していて、結果もそうだなと実感しています。全員に発信すると、誰にも届かない場合があるけれど、ある特定の人に発信すると、その人を掴むことができるということです。実はその積み重ねの方が成果が出やすい。

かなり具体的な話をしました。
書いていて思いましたが、やはりこれは田舎に限らない(笑)

もう一つゲストハウス・ホステルという観点で重要なこととして、経営者としてのポジショニングがあります。

「ビジネスとしてやりたいのか」「趣味の延長上でやりたいのか」というところです。

これまでもそうですが、この2択というより、自分は0が左で10が右の選択なら、どの辺りなのかをはっきりさせることが重要だと思います。
先ほどのお家型であれば、どちらかというと10の方に近い、インバウンドであれば、10に近い場合もあるかもしれませんが、どちらかというと0に近い方ではじめる場合が多いと思います。僕の場合は3くらいかな。ビジネスに傾いています。

ちなみに、ビジネスという言葉を聞くと、少し冷たい印象ですが、そもそもビジネスというのは世の中に価値あるサービスを提供して、きちんとした対価を頂き、継続して利益を生み出すことで、さらに世の中に役に立つサービスを産み出していく、ということですので、とても素晴らしいんですよ!!

少し長くなってしまいました。お読み頂きありがとうございます。
すでに経営者であればここで書いていることは実践されている内容ですよね。

写真は晩秋に近づいている美しい乗鞍の紅葉・黄葉でした。
次回は少しお金の話をしたいと思います。

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