冬の閑散期を克服するまでの3年の歩み

まだ冬のシーズン真っ只中ですが、閑散期と言われた冬を4シーズンかけて克服したと言える段階になりました。どのようなストーリーで克服したのかを今日は書きたいと思います。
※青文字下線は関連する記事にリンクします。

結論は以下のグラフです。

宿泊は述べ宿泊数です。4名2泊すれば8という数字になります。
ちなみにこのブログを書いているのは2019年1月21日なので、1月は宿泊・ツアー共に実績プラス現時点での残りの日の予約数、2月は現時点での予約数ですので、2月はまだまだ伸びが期待できます。
なお、3月は正直なところまだ苦戦しており、別の戦略を立てて実行していますが、反応がいまいちなので、もう少し頭を使わなければなりません。

ゲストハウス雷鳥の冬の宿泊単価は一人1泊5500円(ドミ含む)ほどです。個室メインの運営なのでこの数字。朝食オーダーや冬季の暖房費も含めています。ツアーはメインが半日のツアーでナイトツアーも含めてもだいたいですが、平均単価6300円前後です。
それぞれの月の売上は上記からだいたい想像つくかと思います。

さて、ここからストーリーを書きます。
2015年秋に一人で乗鞍に移住して試験営業を開始したのですが、当初から周りの人から冬の営業に関して以下のことを言われていました。

「乗鞍の冬は厳しいよ(営業的に)」
「年末年始で冬の灯油代を稼ぐんだよ」
「月に10万は灯油代がかかるよ」
「冬は稼ごうと思っちゃダメ、暮らしを成り立たせると思った方が良い」
「1人のお客さんの予約を取ったらダメ」
「冬は宿を締めるというのも選択肢の一つだよ」
「土曜だけの営業にした方が良い、平日は1人、2人の予約が入ったら赤字で灯油を捨てるだけ」
「近年は土曜だって満室になりやしない」
「お客さんが数人入ったら、その日、自分の家を暖かく過ごせて良かったなと思った方が良い」

というように散々脅されました。

そしてビビった僕は、温泉と一部の廊下などの改修はその年の晩秋に行いましたが、どんな冬になるのか想像もできなかったので、そのまま2016年の一冬はとりあえず一人で運営し、どういう状況になるのか様子を見ることにしたのです。

ただ、僕の中ではすでに、この乗鞍という地でなんとかやっていけるという自信はありました。というのも2015年の秋の試験営業でAirbnbのみの販売だったのに、シルバーウィークと10月の3連休そして、土日しか予約を受付してない状況で、インド、アメリカ、フランス、韓国、ドイツ、マレーシア、台湾、オーストラリアなどからゲストがきたからです。そして、空いている時間は友人や後輩たちと秋に乗鞍や北アルプスを歩いてこの地域の魅力を改めて感じ、これは当初の目論見通り、インバンド中心に温泉付きゲストハウスで運営していれば、ビジネス的にはいけると確信をしました。

しかし、冬は想像できなかったし、脅されてビビっていた。。。
学生の時に様々なスキー場にいったけど乗鞍という選択肢は一切なかった自分にとってはどれくらいスキー・スノボ客が来るのか未知でした。スノーシューができることもわかっていたけど、乗鞍・上高地ではまだ経験したこともなかった。なので1年目の冬は試験営業しながら、とにかくこの地の冬の魅力を発掘しようと思ったのです。

結果、1年目(試験営業)は土曜においても全く予約がない日もありました。
初年度は除雪ローダーもなかったので、雪かきに1日5時間くらいかけていた日もありました。たまにスノボにも行ったし、乗鞍高原内をスノーシューで歩いたりもしましたが、だるまストーブ一つだけ灯して、じーっと耐えている時間が長かったんですよね。
「これはほんとにやばい。来年は冬の営業は辞めた方がいいな」などと考える時もありました。とにかく春が早くきてほしいなと。あまり人に言ってないですけど、結構辛かったんですよね。知り合いもいないし。不安は募る一方。

ただ、たまに晴れた日に乗鞍岳が神がかってほんとに美しかったし、Mt乗鞍スノーリゾートの雪質は凄すぎた。こんな雪質でずっと滑れるのは幸せだな。スキー場は中規模だけど全然楽しい、満足だなと。そして厳冬期に剣ヶ峰まで当時パトをしていたKさんに連れてってもらえて、そこからバックカントリーをした時のあの感動は今でも忘れません。善五郎の滝は氷瀑になるし、雪がモフモフのスノーシューは楽しい。
しかし、、、全く人がいない。スキー場にも、高原内にも。

確かに何もしなかったら厳しい。ただ待っているだけなら冬の営業はしない方が良いかもしれない。でもこの素晴らしさをとにかくみんなに伝えたいと思ったんですよね。こんな冬の楽園はない。だから営業の仕方次第では、呼び込むことはできるんじゃないかと。
やらないと決める決断は簡単であれば、自分の直感を信じて、可能性を広げる方に一旦舵を切ってみて、ダメだったらそこで見直せば良いと思い、不安を打ち消して勝負に出ることにしました。
過去のブログも参照。
冬の寒冷地における宿の経営、乗鞍の可能性①
冬の寒冷地における宿の経営、乗鞍の可能性②

そして、僕が次年度(2年目の冬に向けて)立てた戦略は以下です。
1.誰もが手軽に楽しめるスノーシューにまずフォーカスを当てる。
2.魅力を伝えるためにはスノーシューガイドツアーで自分が感じた感動をゲストと共有する
 →お客さんに発信してもらう→次のお客さんを呼ぶ
3.独自のガイドツアーを開発する
4.雪の体験の少ないアジアのゲストを中心に集客する
5.雪質、秘境、人が少ない(静寂)を売りにする

1.誰もが手軽に楽しめるスノーシューにまずフォーカスを当てる
僕自身、実は乗鞍に来るまでにスノーシューの体験は2回しかありませんでした。その2回ともにスキー場の周りをただ歩くだけ。それでも楽しかった。しかし、僕の知り合いでスノーシューをやったことがある人は皆無でした。アウトドアに常に親しんでいる人の中では、スノーシューなんて、もう終わりだ、なんて声をちらほら聞きますが、自分は全くそう思いませんでした。そもそもやったことがない人がまだ沢山いるから新規開拓にフォーカスし、さらにアジアというマーケットに目を向ければポテンシャルは無限だと思いました。
「ビジネスはマーケットポテンシャルの高いところからまずは攻めろ」とウェザーニューズの石橋さんや上司から叩き込まれていました。ウィンタースポーツの中で一番ポテンシャルのあるのは、間違いなくスノーシューです。

2.魅力を伝えるためにはスノーシューガイドツアーで自分が感じた感動をゲストと共有する

もともと奥日光でゲストハウスをやろうと決めた時に、ガイドの資格を取ろうと思っていたんです。自然が好きだったのもあるし、ガイドという仕事は自分の中の一つの夢だった。なので奥日光の大自然の中でスノーシューのガイドツアーができたら良いなと思って事業計画を立ててました。その奥日光の計画は結果的に破断になったのですが、僕はそのまま勉強を続けてガイド試験を受けることにしていたんです。乗鞍で候補の物件を探し始めていた時は、まさにガイド試験に向けて勉強をしたり講習を受けていたりしていた時期でした。なので、乗鞍でも絶対にこの資格は役立つだろうと思っていたんです。

乗鞍高原と上高地には感動できる場所が沢山あるんですよね。移住するまでに経験した過去2回のスノーシュー体験とは全くレベルの違うフィールドがここにあったんです。だから、その感動の場所に連れていく、自分がやって楽しかった、雪の中に飛び込む、ダウンヒルを楽しむ、滑って転ぶ、走るという体験をすれば、間違いなく笑顔を作れるという自信がありました。今はそういう体験をSNSで発信する世の中です。そういう満足度を一つ一つ積み重ねていけば、口コミで少しずつでも広がっていくだろうと思っていました。

では、実績のない僕が何でガイドツアーを売ったか。

ホームページ
booking.comの写真を活用
・スノーシューパンフレット
・個人のホームページやSNS

宿があるというのは大きいですね。乗鞍付近で宿を調べていたら雷鳥のHPを見つけ、スノーシューツアーを発見したという人が2017年、2018年は多かったですね。そして、Booking.comの写真の最初の方にスノーシューツアーの写真を掲載しました。Booking.comは閲覧する人が多いと思うので、そこでまず知ってほしいなと思ったのです。これも効果がありました。アナログ的な取り組みとしてはパンフレットを作り、松本と高山のゲストハウスに配りました。ゲストハウスには「どこに行ったら良い?」と聞くゲストが必ずいるからです。松本、高山に滞在しているゲストの誘客につなげました。そして、個人のホームページでは、自分の生き方を含めて、個人ガイド藤江の世界観を伝えるようにしました。

2017年からツアーをはじめ、2018年の2月はガイドは自分一人で対応し、僕個人の収入にすれば(実際は雷鳥の売上に計上)、リーマン時代の月収並みでした。2018年の冬ですでに閑散期と呼ばれていた時期を黒字にすることができました。ちなみに2018年時点において、すでに乗鞍・スノーシュー、上高地・スノーシューと調べると上位3くらいに雷鳥のページが表示されていました。

3.独自のガイドツアーを開発する
乗鞍・上高地はもちろんガイドツアーは昔からやられていました。なのでそこで経験のない自分がツアーを売っていこうとしたら、やはり差別化を図るしかありません。一番わかりやすいのが、やはり商品自体を誰もやっていない全く別の商品を作ることですよね。そこで氷瀑の善五郎の滝に、自分で投光器を運んで夜ライトアップしてしまおうと思ったんです。過去にやったことはあったらしいのですが、具体的な商品化はされていませんでした。しかし、ナイター営業もしていない、街もない乗鞍において、夜のアクティビティーは絶対ニーズにあると思ったんですよね。なのでナイトツアーを商品化しました。今もかなりの頻度で行っていますが、今は雷鳥に来ているゲストが95%なので、それを広げる方法はいくらでもあると思っています。しかし、あまりよそ者が奇抜なことをやりすぎるのもどうかなと思って、静か〜にやってます(笑)

日本で天然の氷瀑のスノーシューナイトツアーなんてやっているところは、あるのかないのか知りませんが、フックとしては最適ですよね。そして雷鳥の立地がその善五郎の滝に行くのに乗鞍の中で一番良い場所なんです。これも運命ですね。
商品化に関しては以下の記事も参照ください。
商品化のプロセスと乗鞍の可能性③

4.雪の体験の少ないアジアのゲストを中心に集客する
これはターゲットの話ですね。平日にお客さんを入れたいのであれば、乗鞍の冬はインバウンドに注目するのが一番わかりやすい方法。
私をスキーに連れてってのような、日本におけるスキーブームは今はないわけで、日本の経済状況からして、それが再来するとも思えない。草の根的に、若い人にウィンタースポーツの普及を図っていくことに可能性はあるかもしれませんが、今すぐ劇的に変わることはないでしょう。もう一つはリタイヤした中高年にターゲットを当てるかですね。そうなれば、ここ乗鞍においては、土曜日、年末年始、連休を満室にしてビジネスを成り立たせる戦略を立てるのか、中高年にターゲットを当てるか、インバウンドで平日を埋めるかという3つくらいの戦略になるかと思います(他にもあれば是非ご提案ください)。

僕はインバウンドに注目したのですが、冬はアジアですよね。雪を見るだけで感動する彼らなんですから、乗鞍や上高地でスノーシュー体験なんてさせてしまったら、大袈裟かもしれませんがもう涙物です。実際に、興奮のあまり涙するゲストを何人か見ています。そして今やアジアな人は「私を日本にスキーに連れてって」という状況になっていることに地方の苦戦しているスキー場は気づいた方が良いですね。

上記の動画は2016年にマレーシアのファミリーが訪れた時の動画です。雪で大興奮。

そして運にも恵まれました。2019年の今年、いっきに飛躍したのは、昨年の台湾のマオさんを始めとするインフルエンサーとの出会いが大きいです。そして骨折によって時間ができたので、Webマーケティングに僕が時間を割いたというところです。

マオさんはBikepacking Dairyというカテゴリーで2018年の12月に雷鳥に来た時のFacebookフォロワーは8000人、1年が経ち、現在は20000人を超えています。彼からの発信で台湾の方にどれだけ情報が届いたことか。もう感謝しかありません。そして、なんとマオさんの妹さんは、日本旅行のMaomaoTVを運営するユーチューバー。インスタ&Facebookのフォロワーは10万越えです。その妹さんが昨年冬に雷鳥とMt乗鞍スノーリゾート、上高地スノーシューを体験していて、発信してくれました。さらに、「世界は教室である」というブログを運営し、Facebookフォロワーも4万人いる台湾のファミリーも雷鳥のリピーターで、何度も乗鞍と雷鳥を紹介してくれました。今年も2月にも来ます。こちらの記事を是非みてください。

そして、これも運命だったのかもしれませんが、僕の足の骨折。しばらく何もできなかったので、Webマーケティングを勉強して、台湾・香港・シンガポールからこの冬徹底的に誘客しようと戦略を立て、ランディングページの制作やSEOに力を入れました。それをマオさんに中国語に翻訳してもらいました。

結果、どのようにしてこのツアーを知ったか?という答えに対して、1番多かったのはGoogle検索でした。上高地はもともとブランド力があります。そもそも海外の人は冬に上高地に入れないなんて思っていません。なので冬の日本旅行の一つに上高地を視野に入れる人がそれなりにいます。しかし実際に調べてみると入れないとわかる。しかしツアーはあるということがわかります。「上高地・冬」「上高地・雪」などと中国語で検索すると、雷鳥の中国語の上高地ツアーに関する紹介記事がまずトップにでます。そして動画や写真などはほとんど雷鳥のものです。そもそも冬の上高地に関する中国語の記事が皆無だったので、我々がきちんとしたGoogle好みの紹介記事を書けば、一番トップにくるんですよね。もちろんセールスレター的な工夫もしていますが。

そして、マオさん、マオさんの妹さん、世界は教室のフォロワーさんたちももちろん来てくれます。感謝感激です。複合的な場合も結構いますね。実は台湾より香港の方がツアーの申し込みが多いという事実もあります。香港人も彼らのブログを読みますし、香港は登山ブームですからですかね。
ちなみに、インバウンドは雪不足あまり関係なく予約が入るという利点もあります。

5.雪質、秘境、人が少ない(静寂)を売りにする
ここはまだまだ発信力が弱いですが、全世界的に、秘境へのニーズが高まっていると言えるでしょう。すでにインスタグラム等で有名な場所で写真を撮っても自慢にもならないわけです。自分がインスタ映えのポイントを探す、周りが誰も経験していないことを経験するというところにニーズがあります。それは自分に置き換えたらわかりますよね。確かに冬の地獄谷野猿公苑は一定のニーズがこれからもあると思いますが、もう全世界的に有名じゃないですか。そして観光客でごった返す。それはそれで観光地としては嬉しいわけですが、それとは別に、観光客で混むポイントはもう行きたくないという旅人がかなりいるんですよね。

世の中は情報洪水の時代で、世界中の観光スポットが瞬時にインターネットやSNSで写真や動画で観れてしまう。であれば、まだそんなに注目されてないところに行きたい、秘境の人が少ないところでゆっくり過ごしたいという人がいるわけです。しかし、誰かが訪れ出すと、どんどん人が増えていき、もともとの魅力が薄れるジレンマもありますよね。どういうバランスを取っていくかは、今後の課題ですが、乗鞍はそこを心配するような状況ではまだないでしょう。
その秘境や静寂、雪質に関しては、ツアーのランディングページでセールスポイントにしています。

以上の取り組みの結果が、最初のグラフです。
8月の売上が一番ですが、2番目はどうやら2月になりそうです。昨年までの2番は10月でした。閑散期から完全に脱却したと言えます。さらに相乗効果で1月2月は8割が直予約という結果になりました。そしてツアーはアクティビティーサイト(OTA)には一切掲載しておらずすべて直予約です。

しかしながら、宿泊の稼働率的には実はまだ40%前後です。8月は1月2月の倍の宿泊数になります。なのでまだまだ伸ばせる余地があるということ。稼働率8割はあるけど厳しい営業しているとか、伸ばせる余地がない宿泊施設は、売上を伸ばそうと思えば横展開することになりますが、雷鳥の場合はまだまだ深堀ができるということです。この辺のビジネスの視点は以下のブログも参照ください。今の毎日PVがあり、僕が書いた記事でアクセスの多いブログです。
浅草でゲストハウスをやらなくてよかった

まとめで言いたいこと。
まず自分がどう感じているかを大切にした方が良い。僕はこの地域の冬にポテンシャルを感じていました。であれば、縮小ではなく、可能性を信じて、恐れずとにかく行動しかない。結局はやるか、やらないか。この冬の課題を克服するために3年かかってます。

そして散々ベーシックワークライフと言いながら、僕はかなり仕事してます(事実してい述べてているだけ)。この冬はウェザーニューズの時のピーク並みに仕事してます。年始は1週間、6時間睡眠以外は、ガイドか宿のオペレーションに立ってました。そして抵抗力が弱まりインフルエンザにもなりました。。。迷惑をかけてしまいました。でも成し遂げたいことがいくつかあります。その一つがベーシックワークライフ。4月から実現するためには、まず冬にもっと利益を出さなくてはならないと思ってます。何かを得るためには、相当の努力と行動が必要なのは言うまでもありません。

これまで良いことばかり書きましたが、
3月はまだまだ苦戦中。運営的にはヒーヒー。ガイドツアーは体力使うし宿の運営との両輪は大変。投資しすぎで手元のキャッシュがギリギリ。ここに書いちゃいますが、改装でお金使ってしまって12月の自分の給与はペンディングしたまま。ベーシックワークライフのためには売上もそうだけど宿の生産性向上が急務。5月のGW開けから7月前半が次の課題。

そんなにガツガツしなくても、雷鳥は経営的には軌道に乗ってますが、理想のライフスタイルを実現するために、僕は次の課題に向き合い、そして価値創造を継続していきます。

そのモチベーションは日々の暮らしの中に、僕自身がベーシックワークライフをしながらやりたいことで世の中にも貢献しながら、年に1ヶ月間を2回、海外に旅できるようなライフスタイルを実現したいと思っているからです。

長々とお読み頂きありがとうございました。
何かのヒントや、お役に立てれればと思いシェアしました。

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