黒川温泉が地域・観光地創りの見本である6つの理由

黒川温泉には、社会人2年目か3年目の九州旅行で行ったことがあった。

当時すでに全国の温泉地の中でも常にトップ3に入るくらいの場所で、「人気」という意味で、別府・湯布院などと合わせて訪れたが、行ったことは覚えているが、あまり記憶に残っていなかったのが正直なところ。

しかし、ここ数年、僕の中では、日本の温泉地の中で一番熱い場所。温泉地だけでなく、観光地でも日本を代表する場所、いや最先端だと思っている。やれたらいいなという地域づくり・観光地づくりをどんどん先に実際の形にしていたからだ。その理由についてブログで記載する。

1.黒川温泉の理念

具体的に何をやっているかは、まず以下の黒川温泉の公式サイトを見てもらいたい(これが全てではない)。

https://www.kurokawaonsen.or.jp/

重要なポイントは、

「黒川温泉一旅館」という理念。

直径4km圏内の地域全体を一つの旅館として考えていること。

それぞれの宿は「隠れ部屋」、通りは「廊下」、地域景観は「中庭」と捉えて、地域全体で統一したコンセプトの元に、訪れる方々のおもてなしを行っている。

さらには、行動指針が、

「競創と共創」

互いに競って宿を創り、共に集って地域を創るという考えで事業活動を行なっていること。

これでどんな世界観で地域・観光地づくりができているか想像がつくだろう。この理念は地方の地域や観光地が見習うべき点である。

そして、その中で行われている一つ一つの取り組みは紹介できないほど素晴らしいものがある。

2.次々と生まれる独自の新事業

特に僕が注目していた取り組みを挙げるとすると

・地域としての採用活動及び人材育成のための黒川塾
黒川温泉一帯地域コンポストプロジェクト


こちらもそれぞれ紹介したいが、気になるのは、どうやってこのような事業を生み出すパワーが地域にあるのか、というところだった。

それを知るために、Twitterで繋がっていた、黒川温泉のキーマンの一人、旅館組合の事務局長の北山さんに会いに行った。これが今回の旅の一つの目的。

北山さんは謙遜するだろうが、今の黒川の原動力であり、地域プランナーとかデザイナー。現在のほぼ全てのプロジェクトを北山さんが仕掛けている。

3.組合事業を担うプロの専属スタッフがいる

北山さんは、旅館組合の理事ではない。

旅館組合の代表理事の右腕として専属の地域づくりデザイナーである。

例えば、多くの観光地では、旅館組合・観光協会などがあるが、それらは、地域事業者で組織され、実際に活動しているのも、それぞれの経営者・事業者であることが多い。いわゆる「片手間」で組織運営を行なっている。

黒川温泉も組織自体はそのように構成されているが、実働として組合のために動いている部隊が専属で5名もいて、その中の事務局長が北山さんなのだ。

もちろん、最初に述べたコンセプトのもと、組合員も事業に関わっているが、司令塔となって動いているのは、北山さんを中心とした専属のスタッフたちだった。

次に気になるのが、5人雇う資金がどう生み出されているか?

4.黒川温泉旅館組合は、法人格であり、事業収入がある

これが全て。
今の組合が法人格であるという部分には、まだ課題があるとのことだが、事業収入がピーク時には3億円もあり(現在は1.5〜2億)完全に黒字経営をしている。

納得。。。
この差だ。

地域で稼いでる事業がある。

遡ること1986年、黒川温泉の第二世代と言われる方々が、黒川温泉一旅館という理念を作り、現在の「入湯手形」を導入した。

3つの露天風呂を巡ることができる入湯手形は1枚1300円。ピーク時には年間20万枚を販売し(オーバーツーリズム問題になった)、累計販売数が300万枚を超えている。巡った宿には250円が還元されるため、残りの550円が組合の収入となる。現在も年間4,5万枚の販売している。

そしてその稼いだ利益を全て未来の黒川温泉に継続的に投資をしている。

その一つが先ほど注目していると述べた昨年のコンポストプロジェクト。補助金も活用しながら行なっている。旅館で出てくる生ゴミを堆肥にする循環を生み出す取り組み。その堆肥の販売も始まったが、手間を考えれば、それが利益が出る仕組みにはほど遠いとのこと。

しかし、黒川温泉の狙いは単純に堆肥を販売することではない。

5.持続可能な地域ブランディング戦略

すでに黒川温泉はサーキュラーエコノミーによる確固たる地域ブランドを作りつつある。

旅館で出てきた堆肥を地域の生産者が活用して、そこで育った野菜を旅館で出していくブランド作りをしている。それだけではない、未来に向けて地元の農家、畜産業が協力して地産地消のサーキュラーエコノミー型の取り組みが始まっている。

そういう未来の考え方があるから、組合員もそして、旅館の従業員も積極的に参加して取り組んでいるらしい。この話だけでブログが書けそう。

このような事業を生み出す黒川温泉の旅館組合の組織や構成員が気になった。

6.30代から40代が主体となる地域・観光地創り

代表理事は50代。その他の理事(各事業部長)たちは30代から40代で構成されている。若い理事は33歳で2人。その他2人も40代前半。旅館の社長はまだ親がやっているが、その世代は組合でやっていることは見守ることに徹しているとのこと。総会でもその上の世代の人たちは出てこない。

普通では考えられない。

なぜそれができるか。それは、当時入湯手形などのアイディアを生み出してきたのは、その第二世代と言われる経営者が30から40代の時だったかららしい。

未来を作るのは、次の世代だということをわかっているのだ。

そして、黒川温泉には、若い人たちが戻ってくるという。

「後継で課題があるのは、1施設くらいですよ」と北山さん。
なんとも羨ましい状態だろうか。

それもこれもバブルの絶頂の時に、その当時ではなく、30年、50年先の未来に向けて動いていたからですね。

黒川温泉の事業を紹介するリーフレットの表紙を見ればそれがわかります。

新型コロナウィルスにより観光業は瀕死の状態だ。

しかし、目先生きるか死ぬもあるが、今だからこそ、未来に目を向けて30年、50年先を目指して取り組むことが重要なのだ。

今、僕らの目の前には山のように課題が積み重なっている。
見たいくないことに目を瞑り、先延ばしにし続けている問題に溢れている。そして地球温暖化などすでに不可逆な領域に達している問題もある。

一人の人間として、それに向き合い、解決策を見出していきたい。

自分が生きている間に芽が出なくても良い。そんな時間軸で物事に取り組みたい。と黒川温泉を視察して改めて決意した。

北山元さん、本当に凄い方です。
苦労は多いようですが、旅館組合に雇われている身ながら、

「休みって自分の用事がある時くらいですよ(笑)月2くらいかな(笑)」
「でも今の仕事が形になってきて、やりがいあって楽しいんですよ」

想いで生きている方で、僕が惹かれる人。
完全に北山さんファン(笑)。

今後の取り組みを応援したいし、いつか一緒に仕事ができたらなと思います。
北山さん、今回はお忙しいところ2時間もお時間を頂きありがとうございました。

北山さんのSNS
Twitter : https://twitter.com/hajime1976
FB : https://www.facebook.com/hajimekt
IG:https://www.instagram.com/hajime_kitayama/?hl=ja

最後に、北山さんに課題について聞きました。

「今があるのは、第二世代のお陰。今の第三世代が第二世代を越えるような事業を生み出さなければならないことです。コロナもあり、旅館だけでは、観光地経営は成り立たない。体験コンテンツ・農業・物販など、事業の多角化が急務。そのためにも黒川塾という経営者育成事業もやっています」

課題に向きあい、未来をデザインしている。

この他にも紹介したいプロジェクトがたくさんあるが、最後に二つだけ、

黒川温泉の公式Webサイトには、各旅館の予約ができるシステムが組み込まれている。まだまだ割合は少ないが、それでも年間6000万くらいの予約があり、5%が組合の事業収入になってるとのこと。地域ブランドを確立していくことで、じゃらん、楽天などのOTAからの脱却も地域で取り組んでいる。

さらには、各宿の人材確保にも課題があり、採用コストがとても大きかったため、黒川温泉のWebサイトには採用ページがある。4ヶ月で20名の応募があったとのこと。コロナが落ち着けば、需要が伸びた際に採用はさらに難しくなり、対応できなくなってしまう。それを見据えて、地域ブランドで採用している。

あと、、、

全宿共通で環境に配慮したシャンプー、ボディーソープ使っているのもさすがでした。

今回黒川温泉の旅館 山河さんに宿泊したのですが、最高でした。

本当はもっともっと書きたいことがありますが、すでに長いのでこの辺で。

さて、どこから真似ようかな(笑)
乗鞍の環境・特徴を活かして真似よう。

このまま四国に行って、山に登りながら、次はゼロウェイストセンターで勉強し、またブログでまとめたいと思います。

九重連山

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