なぜ、この状況下で宿もカフェも営業するのか?

今の状況は、実は2016年の1年目に乗鞍に来た時と少し似ている。

移住して宿をお試し営業をしていた1年目の冬、周囲から冬なんて稼げないから、休んだ方が良い。やるとしても土日だけ営業して、平日はスキー場でアルバイトしたら良いと。

でもそんなことしたら僕は何のために脱サラしてここに来たんだって思ったので、とりあえず僕は宿を営業した。
過去にもそんなこと書きました。
冬の閑散期を克服するまでの3年の歩み

結果、2015-2016は年末年始だけそれなりに予約が入ったが、そのあとは土曜でも予約ゼロの日もあった。平日はほんと予約が入らず、その年は雪がそれなりに多かった印象で、僕はブルドーザーもなかったので、午前中広い敷地内をひたすらスコップで除雪をして、午後は疲れて燃料節約で暖炉の前でボーッとしている日が多かった。

ただ、少しでも来ていただけるお客様がなぜここを選んで来ているのか、この地の冬の魅力は何なのだろう、この先どうやって営業しようかとずっと悶々と考えていた。何より来ていただいたお客様がみんな笑顔だったのが印象的だ。

2016年冬悶々としながらよくスノーシューで散歩していた

そうやって全然お客さんが来ない状況の中、辛かった日もあったけど、僕には3年、5年先にここは必ず人で賑わうと思い、投資をして改装を始めることにした。

その決断を後押したのは、2月に当時スキー場のパトロールだった菊池さんが僕をはじめて冬の乗鞍岳にBCに連れて行ってくれたこと。

その時も夜明け前から登りはじめ、途中で朝日を眺め、10時頃に剣ヶ峰山頂に着いた。快晴の絶好の天気に恵まれ、僕は「この世にこんな美しい景色があるなんて」と思うほどの感動を味わった。

初めて板を担いで乗鞍岳に登った時

そして乗鞍最高峰の剣ヶ峰に立った時、乗鞍岳から勇気をもらい、僕は当時借金してでも改装する決断をしたのだった。

乗鞍岳剣ヶ峰3026m

その後、自分が狙ったことを一つ一つ実行して、年々予約数は増加、2017年から始めたスノーシューツアーは特に訪日旅行者にどんどん知れ渡っていった。そして、2019年に冬の売り上げが夏の売り上げを上回り、2020年の12月中旬から2月の中旬までは、超忙しく本当にびっくりするくらいの売り上げとなっていた。

時間は少しかかったが、ゲストハウス雷鳥は冬に人の賑わう場所になった。
ただし、2019年にはじめたGiFT NORiKURA Gelato&Cafeは初年度は苦戦だった。

人生は山あり谷あり。
2020年暦の春にCovid-19がやってきた。

4月から5月は休業し、6月から営業を再開。

宿は秋までは宿泊人数制限もしていたし、メインターゲットにしていたインバウンドだったこともあり、売上は昨年比でもちろん苦戦。国内旅行へターゲットを変更し、ワーケーションなどに力を入れたものの赤字。理由は僕が事業の多角化を含め自社以外の様々な取り組みを実行しているため人件費や先行投資がかなり膨らんだからだ。

一方、Gelato&Cafeは初年度の反省点を活かし、理想と現実のギャップを受け入れ拘りすぎていたところの一部は妥協し売上を上げる方向に転換したところ、この状況下でも売上をかなり上げることができ、宿を助けることにもなった。
そしてその多角化した撮影業務(まだ業務中)が今年の売上を助けてくれる。

年末そして年明けに11都道府県に緊急事態宣言が発令されてからというもの、宿とツアーの予約は最悪な状況だ。それでも予約数は2015-16シーズンよりも良いが、人件費と暖房費を考えれば休業した方が良い。

Gelato & Cafeは立地的に冬は苦戦が予想されることから、そもそも営業することすら大チャレンジであるにも関わらず、さらにこのコロナの状況悪化があれば普通は休業を決断するだろう。

でも宿は営業を続けている。
Gelato&Cafeは土日だけだが営業をしている。

まず理由の一つとして4月5月のように、休業したからといって持続化給付金のようなものが再度もらえるわけではない。休業要請もされていないということ。

そしてこの先どんな状況になるかわからない。最悪な状態が続く可能性だってある。僕は行政に頼って何かをするというスタンスはもともとなくて、使えるものは使うという感覚だったので、別に誰を責めるという気持ちもない。

「僕らは僕らの力で生きていかなければならない」
「どんな状況下でも生きていける力」

結局はここが試されている気がした。
このままこの状態が続いて好転する見込みだってわからない。停滞はやる気をどんどん削いで行く。ここに集うスタッフもいる。

そして理由の二つ目はまだまだ目指すべきところの過程だということ。

僕のホームプレイスとなった乗鞍。今の僕の夢は、
「サステナブルな乗鞍地域を創っていきたい」ということ。
もちろん一人ではない。同じ想いを持っている方々と。

新緑の一ノ瀬園地 オソメ池

こんな時代だからこそ、人々の目をこの地に向けられるのではないか。

登山で山頂を目指していた時に、天候悪化等で状況に応じてビバークすることはあるかもしれない。でもビバークして、山頂を目指すのか、撤退するのかいつか決断しないと死が待つだけ。今のコロナの状況でビジネス救助隊はおらず、誰も助けには来ない。

今の僕にはまだ厳しい暴風が吹いていても山頂の光が見え、僕や会社に体力が残っていることがわかっている。サポートしてくれている人たちもいる。だから、山頂を目指して歩みを続けたいと思った。そして目指しているのは僕一人ではない。それぞれ想いを持っている人が役割を果たせば、この先に大きな達成や感動が待っているのではないかと信じている。だからまだ体力があるうちはこのチャレンジを続けたいと思っている。

先日、雷鳥のスタッフや撮影のパートナー智くんとまた夜明け前から登りはじめ6時間かけて冬の乗鞍岳に登った。そしてまたまた乗鞍の神は微笑んでくれ、最高の快晴の中で頂上に辿り着けた。

2021年1月21日 乗鞍岳剣ヶ峰山頂

正直な気持ちは不安だらけ。

そしてお客さんいないのに、いろいろ手を出しすぎてやることがありすぎて、めっちゃ忙しくて我慢の連続。

それでも一歩ずつ一歩ずつ、前に足を運んでいけば、喜びと感動が待っているんだと改めて感じた。厳しい自然環境だからこそ見せてくれる景色は本当に格別だ。そして少しだけ成長した自分たちに出会えると信じて前に進みたい。

宿もカフェも会社の成長の歩みは今止めるべき時ではない(あくまでもうちは)。やるべきことは沢山あるし、その先に実現したいことがあるから。これが営業している理由。

人生なんてあっという間だ。
止まってたら、その先にある美しい景色をみれずに終えてしまうかもしれない。

誰かにコントロールされた今を生きているのではなく、自分の人生の今を生きなくては。

朝日に照らされる乗鞍岳

もちろんリスクをきちんと理解して対策してですね。

ゲストハウス雷鳥、営業中です。
それぞれの判断を尊重しますし、それぞれの状態次第で判断は変わります。それは我々も同じ。宴会はご遠慮頂きます。お互い感染対策をきちんと行い、あっという間に過ぎてしまう、2度と来ない2021年の冬を楽しみましょう。

今年の上高地スノーシューツアーはレベルアップして、早朝出発の上高地霧氷スノーハイクツアーとなっていますよ!

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皆様のお越しをお待ちしております。

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