ティール組織に近いチームができちゃった話

これを投稿する頃には年があけるのだろう。5年ぶりに東京で雪のない年越しを家族全員と過ごしている。うちはみんな寝るのが早くて大晦日の夜は22時過ぎに一人になったので(笑)書きたかったブログを書き始めた。

朝、ゲストハウス雷鳥に僕が出勤すると、ツアーの準備はほぼ完了している。朝のオペレーションは8時からなんだけど、みんな自分の判断で起きて、準備に必要な時間から仕事に入る。僕は何も言ってない。

ゲストハウス雷鳥はセルフ朝食を提供しているんだけど、これが全て手作りで素材にこだわっているのは、あまり知られてない(笑)。そのメニューが僕の知らないところで変わっており、スタッフが得意で作りはじめた物が定番メニューになっていたりする。僕が何も言わなくても、新しいスタッフはひじきの作り方や切り干し大根、花豆など、全員が一通りの朝食メニューが作れるようになっている。

予約管理の仕方や、オペレーションも知らないところで進化していて、たまにオペレーションに入ると自分がわからないことがある。

僕のベーシックな仕事は、ゲストハウス雷鳥がどんな宿を目指しているのか、をスタッフに共有すること。そしてきちんと給与を出すこと。汚れがきになるところをたまに指摘すること。

ここでティール組織については、以下Webサイトの引用だが以下に記す。

ティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、目的のために進化を続ける組織のことだ。そのため指示系統がなく、メンバー一人一人が自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していくという特徴が見られる。

まずもって、雷鳥のスタッフはこれまでの短期のアルバイトやヘルパースタッフも含めて国籍問わず魅力ある本当に優秀で優しい人が不思議と集まる。

前職は一部上場企業だったし、営業でいろんな会社や役所などを見てきたけど、チームでいったら、今の雷鳥スタッフは、僕が今まで見てきたどんなチームより強いというか優秀だという実感があり、安心感がある。

そもそも基礎的な能力が高いから、勝手にティール組織になっちゃうのかもしれないんだけど、こんなことが影響しているかなーと思うことを書ていてみる。

1.ティールを構成できる人を集める

 この秘境ではそもそもスタッフを集めること自体が困難だ。でも僕は人材紹介サービスに頼ったことは一度もない。僕の個人のサイトでの発信と、ゲストハウス雷鳥のHP及びSNSだけ。少し時間的な余裕があれば、募集を出せば必ず数人からの応募がある。緊急時は知り合いの紹介。

 僕がメールやネットを使った面談で確認すること、それは理想のライフスタイル人生において大切にしたいこと。ここでまず雷鳥や経営者である僕のベクトルと合っているかを確認する。そこで自分の意思をしっかり持っているか、自立して生きているか、何かに頼ってたり、誰かのせいにしていないか、常識に捉われていないかなどを確認する。なぜうちで働きたいのか?なんて聞き方は絶対にしない。

 そして次に旅の経験やどのようなアウトドアに興味を持っているか確認する。乗鞍がアウトドアを楽しむ人にとってはパラダイスなことは言うまでもない。インドア派やシティー派、街の生活しかしたことない人が、憧れで田舎に来たいというのはよくある話。そういう人とは縁はないと思っている。

 僕は「この人は山に一人で入ってキャンプができるかどうか」という視点で見る。言ってしまえば単なる旅好きで、一人でバックパックでゲストハウスを回っていたり、世界旅行するのは誰だってできる(できない人が多いけど)。実は世界を旅している人でも「一人で山に登ってテント泊した」ことがない人が多い。今のゲストハウス雷鳥メンバーは全員それができる。

 別に雷鳥に来る前にやったことがなくても良い。「やってみれば?」と言った時に、「やってみます」と返答してくるであろう人なら良い。かつ、それが無謀な計画でなく、きちんと自分で計画を立て装備等を整えて行くと思われる人であれば良い。細かいことは書かないけれど、経験がある人ならわかるはず。この能力はどんな仕事においてもベースとなる筋力としてとても大切なことだと僕は思う。

今回の1ヶ月の休館及びスタッフ休暇の彼らの旅を見てほしい。

BikepackingでNZに3週間滞在したマオさん
西日本をヒッチハイクで1ヶ月旅をした隼太朗くん
パタゴニアを中心にアルゼンチン・チリを約1ヶ月歩いた竹田さん
スリランカにCurryを学び素焼きのうつわの買い付けに約3週間行った藤山さん
ネパールのAnnapurna CircuitとBase Campを16日間歩き続けた藤江

僕と目指すライフスタイルや人生観、大切にしたいことが同じ方向を向いていることが、細かく説明しなくても写真の雰囲気からわかるだろう。そして彼らは皆一人で海外の誰もいない山奥でもテントを張って生きていくことができる。

企業はまず、わけわからない洗脳研修なんかしないで、一人で山奥でテント張って帰ってこれる人を育てた方が良いと思う。雷鳥はそもそも前提でその能力を持っている人材が集まるから本当に強い。これが指示系統がなくても、メンバー一人一人が自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していくというティール組織の前提となる人の集め方だ。

2.信頼はするがそんなに期待しない

 これを説明する上で、4つほど取り組みを紹介する。

2-1 自己申告制の勤務時間と給与

 雷鳥の勤務時間は全て自己申告制。僕はスタッフが申告した通りに給与を払う。「1日の勤務時間のMaxは11時間以内にして(1ヶ月Max180時間)」、と言っているだけで、基本のシフトはあるけれどシフト以外の時間でも、休みでも仕事をした場合、働いた分だけ申告してと僕は言っている。自分ができる範囲で空いた時間でツアーの予約管理を自主的にやってくれていたり、掲示物を整えてくれたりする。

 給与は自己申告の勤務時間からベーシックワークライフを適用しているスタッフは基本時給を元に給与を計算する。アルバイトスタッフは時給に基づいて計算がされ、常に自分がいくら稼いでいるのかだいたいわかるようにしている。

 給与もそれなり高い。今の僕以外のスタッフは基本時給1000円から1300円。ベーシックワークライフを適用しているスタッフは社会保険にも加入している。スタッフは僕の役員報酬の月20万よりも多いことが多い(笑)

2-2 休み希望を叶える

 僕は事前に確認したスタッフの休み希望をほぼ100%その通りにシフトを組む。さらに休みの時はできるだけ3連休以上を作るようにしている。これはスタッフ皆が時間を自分でコントロールしているという感覚をできるだけ持てるようにしたいという意図がある。誰かにコントロールされていると思った時点でストレスになるからだ。この秋の繁忙期はだいたい5日連続勤務、4連休というシフトを組んで、みんな仕事をしながら遊びまくっていた。

 もともとゲストハウス雷鳥は1年働くスタッフであれば、11月から12月にかけて1ヶ月の休館日があり、そこで1ヶ月の休暇が取れる。そして4月からGWを除く7月中旬まではそれぞれ交代で1ヶ月の休暇を取る。つまり1年に1ヶ月、1ヶ月の連続した休暇が2回取れることになる。

 人生には余裕や余白が必要だと思っている。余裕がなければ精神状態はどんどん悪くなる。きちんと休みが取れていれば、余裕ができ、日々穏やかな気持ちで過ごすことができ仕事にも前向きになれる。さらに自分が満たされていれば人を笑顔にしたくなるんだよね。経営者である僕も自ら休みをとって遊ぶようにすることで、心置きなく休めるような雰囲気を作っている。

2-3 タスク管理はしない

 ゲストハウス雷鳥には、いつまでに何をしようという計画はない(笑)。みんなで課題を共有したり、僕のやりたいことを話して、だいたいの目安は伝えることはあるけれど、それを強要したりはしない。これは少人数だからできることなのかもしれないけれど。余裕があれば僕を含めて誰かがいつかやるだろうと思っている。絶対にスタッフにプレッシャーを与えないように心がけている。得意な人や余裕がある人がやれば良い。それがそのまま勤務時間にも反映される。仮に、やりたいことができてないなーと思ってもそれは全て経営者である僕の責任だなと思っている。やりたいことや実現したいことなんて無数にある。でもその仕事をやりたいという欲求や余裕がない中でやれば、ストレスになるだけだ。

 「自然にかえる宿」のメンバーが、自然体ではなく、ストレスを感じている状態で、ゲストの自然にかえる旅をサポートできるわけがない。

 このブログだってそうだ。これを1週間に1度更新するなんて決めたら、ストレスで絶対続いてなかったと思う。できる時に、書きたい欲が出ている時に書くだけ。短期的にはなかなか成果が出にくいかもしれないが、長期的にみれば、そういうストレスのない仕事の進め方の方が全体的なゴールに近づいたり、成果が出るんじゃないかって思っている。

2-4 打ち合わせや会議はない・夕食をスタッフ皆で食べる

 毎日交代で僕も含めた夕食の賄い当番を設けている。そして、スタッフキッチン内でスタッフだけで夕食を取るようにしている。僕は食事の時間くらい気を使わず、フラットな状態でコニュケーションができるような時間を作りたいと思っていた。日本のゲストハウスではスタッフとゲストが一緒にご飯を食べたりするところもあるようだけど、雷鳥は線引きしている。僕らのサービスはそこではないと思ってるから。もちろんイベントやたまにゲストと一緒に食べることはある。

 そのスタッフの夕食の時間はとても大切な時間だと思っている。スタッフ同士の信頼関係の構築にも繋がる。旅の話やたわいもない話が中心だけど、その時間の中で、共有すべき情報や確認すべきアクションが自然とみんなの会話から出てくるのだ。打ち合わせや何かのアクション確認の時間を取るのは、大きなイベントの時だけ。それ以外は必要ない。

 家族においても食事の時間を共有している家族ほど、信頼関係が厚い気がする。それと同じだ。

 以上がの4つの取り組み。それでは具体的に「信頼はするがそんなに期待しない」ということを説明する。

 僕はスタッフを信頼している。疑って管理する方が時間もかかるし、精神的にも負担がかかるからだ。もともとスタッフの採用は僕が決めている。仮に信頼を損なうようなことが起きたら、それは僕の見る目がなかっただけ。僕は自分の判断を信じている。だからスタッフを完全に信頼している。一方、一人一人にそんなに期待はしていない。

 期待していないというと冷たい言い方に思われるかもしれない。全く期待してないわけではない。だから「そんなに」期待しないという言い方が正しいかもしれない。僕がこれができたらいいなー、これやってもらえたら助かるなーと思うことはあるけれど、最終的には全て履行責任は自分にあると腹を括っているという意味。だから、その思い通りの動きにならないからって、一切の苛立ちもなければ、責めもしないし、そのことに関して気持ちの浮き沈みもない。怒りの感情もない。

 そもそも期待ってエゴだと思っている。期待に頼っていると、物事は上手く運ばないということを経験から僕は悟った。みている景色はみんな違う。だからこそ結局は自分のしたいことしか人はやらないし、自分がやりたいと思ったことは自分ですべきことだと思っている。もちろん給与を払う以上、最低限の約束毎はやってもらうけれど、それ以上のことを期待するのは、期待する側もされる側もストレスになるだけ。でも僕は信頼はしている。そのストレスのない環境が一番仕事が上手く運んでいくと思っている。だから結果的に、アウトプットは不思議と自然に出てきて、どんなことでもアウトプットが出てくると当たり前ではなく、とても嬉しい気持ちになり、感謝の気持ちが湧く。

 以上から、僕がマイクロマネジメントをしなくても、雷鳥は目的のために進化を続け、かなり良い運営ができていることが理解して頂けたのではないだろうか。

 まとめると、まずは1.ティール組織ができる人をそもそも集めること。人が育つことを期待するのは難しいと思う。それぞれの環境にあった、ティール組織を組める人を集める力が経営者には求められると思う。そして2.スタッフが自然体で理想のライフスタイルを楽しみ、自らの仕事を欲を掻き立てるような信頼関係と生活・仕事環境を作ること。期待はそんなにせずに信頼する。

以上、これでいつの間にかゲストハウス雷鳥メンバーはティール組織のようなチームになっていた。というお話でした。

 さて、そんなメンバーだからこそ、スタッフはそれぞれ自分の進むべき次の道を見出して歩みはじめます。4月にスタッフの卒業がありそうです。ちなみに僕はスタッフが次の進めべく道を見つけた際には、その意志を尊重します。

現在のゲストハウス雷鳥スタッフ
左から 隼太朗、Mao、藤江、竹田、藤山

 よって、1年ぶりにスタッフ募集したいと思います。今回はゲストハウス雷鳥及びGiFT NORiKURA Gelato&Cafe両方の運営スタッフです。なのでCafe運営に興味のある方の応募もお待ちしております。詳細は以下を確認下さい。

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